昨今では会社内における若手の出世したくないムーヴが問題視されているそうだが、確かに負う責任と貰えるドングリ(世間一般では給与ともいう。日本円と換金できるが最近は円高ドン安傾向にある、つらい……)が釣り合ってないことの多い現代社会、出世はあまりしたくない、という気持ちはよくわかる。 しかし今回は別にそこにメスを切り込もうというつもりではないのだ。そんなものしたければすればよい、させたければ見合ったドングリを払えばよい。 私が言いたいのは出世云々の社会的バランスの話ではない。出世魚がちっとも覚えられないという話なのだ。

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【出世魚ってなぁに?】

稚魚から成魚まで成長する間に複数回呼び名が変わる魚。江戸時代まで武士なんかは元服(成人)や出世で改名する慣習があったことになぞらえて、魚の中にも「成長に伴って出世しよう、せや、名前変えたらええやんけ!」ということで導入されたシステム。すべての魚に適応されるわけでもないので、魚社会にも人間と同様、平民の魚と武家の魚がいる模様。魚社会も複雑だ。うおー。 (参考文献:「武家魚法度」第27頁、出世魚の項より引用)

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というのが出世魚なのだが、有名なところではブリ・ハマチだろう。まずこのブリ・ハマチ、どっちがブリでどっちがハマチだっけ?という初心者が陥りやすい順番わかりにくい問題がある。 ハマチ ▶ ブリが正解で、輝きを得たらブリになると思考に落とし込んだら覚えやすいと思う。思うのだけれども、まず以下の表を見て欲しい。

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いや、覚えられるか、こんなもん! というのが正直な感想だと思う。 私もそう思う。ハマチ ▶ ブリ だけでも結構難儀しているというのに、地域によって呼び名がこんなに異なったら、もうしっちゃかめっちゃかである。しっちゃかめっちゃかにも度合いがあるので、出世魚システムを導入して しっちゃかめっちゃか ▶ べっちゃらぬっちゃら などのランクを作ってもいいと思うけど、そんなことをしたら全てがめちゃくちゃである。それにべっちゃらぬっちゃらなんて響きが土着神すぎて、なんかもう怪異としか思えない。

ちなみに出世魚、日本だけでなく海外でも事例があり、アリストテレスが バレロンの雑魚 ▶ メングラス ▶ トリキス ▶ トリキアス という分類を発表している。ちなみにこれはマイワシのことなので、日本だと シラス(マシラス) ▶ カエリ(アオコ、ヒラゴ) ▶ コバ ▶ チュウバ ▶ オオバ という名称になる。 もうどれがどれだかなので、表にするとこうである。

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私が魚河岸さんだったら魚をお客さんの顔にペェーンってしてしまうかもしれない……! 魚河岸さんじゃなくてよかった!!

またイギリスではサケ(サーモン)が出世魚とされており、主に幼少期に出世して制御にあるとサーモンになる。さらに海と川のどちらに棲むか、サーモン(海)とトラウト(川)に分かれるからもはや複雑怪奇! 二枚舌外交さながらの二枚魚外交を繰り出してくるのだ!

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ブリテンなのにサケが出世魚とはこれいかに? いいや、イカでもカニでもない、サケなのだ! 私がイギリス旅行したら査問委員会に突撃したに違いないから、イギリス旅行するつもりがなくてよかった!

【魚だけじゃねえんだわ】

めんどくさいのは魚だけではないのだ。人間社会もそうなのだ。大抵の人が結婚(もしくは離婚)或いは社会的な不祥事による改名くらいでしか変わらないものの、社会の中に居る限りは役職という階級があり、〇〇部長、みたいに役職付きで呼ばれる人も多く、これもまた結構めんどくさい。 なんせ知らない内にいつの間にか出世してたり、降格してたり、転職してたり、没落してたり……おまけに所属する社会や組織も様々なので、貴族、武家、軍隊、社会、それぞれが地位の名称が違っていたりするのだ。 そして言うまでもないけど、もちろん覚えられない。毎回毎回、あれどーだっけと検索検索カチャカチャカチャカチャッテーン!してて辛い。辛いので自分用メモも兼ねて表にしてみた。

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上のふたつの表は限りなく簡略化した貴族と武家の階級だけど、この各地位の中にさらに細かく役職とかあったりするので超めんどくさい。めんどくさいので私が武士だったら殿中でござるしてたと思うから、武家でなくて本当によかった! 切腹しなくて済む!