朝8時半、食パンかじりながら玄関開けたら、アパートの前に言葉にしたくない物体の大が落ちてた。 言葉にしたくない物体の大の横には、切れた縄を首に結んだおっさんが落ちてた。
こういう日は予期しない良いことが起きる、って考えるようにしてる。じゃないとバランスが悪いもん。 人生はきっと良いことと悪いことのバランスが取れるようになってて、きっと私みたいなクソ貧乏な小卒でも、きっとどこかで大金拾うような日が待ってる。
そう思える奴が長生きするし、そう思えない奴が首に縄掛けるんだ。 私はきっと長生きする方。親はとっくに死んだし、親戚は知らないって目も合わせてくれなかったし、小学校も途中で中退したし、貯金だって家賃払ったら820円しか残らないけど、きっと私は金持ちになって長生きするんだ。
だって不幸はもう山盛り味わったし、てことは不幸ももう売り切れってことで、そしたらあとは幸せが勝手に歩いてくるに決まってる。
今日もそう言い聞かせて、私、河波羽加(かなみわか)は朝から晩まで働くのだ。
◇
「おはようございまー……うわぁ、マジでー?」
朝9時、バイト先の寿司屋に行ったら、事務所で店長が頭をかち割られて死んでた。 脳みそは三角コーナーの魚のはらわたくらいキモいし、床はくっさい血でベッタベタ。 おおう、ゲロヘビーじゃんってことで、私はまだ他のバイトが来てないことを確認して、事務所の前とレジの上と店の入り口に設置された防犯カメラの向きを、明後日の方向に変えて録画データを全部消去した。
警察を呼ぼうとは思わなかった、だって取り調べがめんどくさいから。
驚きとか悲しさとか一切なかった、だってパワハラがえぐかったから。